2018年1月17日水曜日

片頭痛


片頭痛は、何らかの要因によって頭の血管が拡張し、血管のまわりの神経が刺激されることでおこる頭痛です。

片頭痛の発作期は、血管の周囲に炎症がともなうため、ズキンズキンと脈打つようなひどい頭痛となります。とくに、こめかみにある側頭動脈が拡張して神経を刺激しているので、片側のこめかみから目のあたりに頭痛がおこります。頭痛がおこる側は、人によって異なり、両側が痛いこともあります。

片頭痛を引きおこす要因を、主として「三叉神経血管説」「頭部前傾の悪い姿勢」から推察しています。



三叉神経血管説

片頭痛は、繰り返し発作的におこる血管性頭痛で、血管を拡張したり過敏にしたりする原因の一つとして、三叉神経が深く関与しているといいます。

三叉神経は、頭蓋内の血管に分布している
→ 何らかの刺激を受けて、三叉神経が興奮する
→ 興奮した三叉神経終末から、血管拡張物質が放出される
→ 血管が拡張し、炎症が引き起こされる
→ 炎症反応が、次々に血管を広がる
→ 血管の拡張と炎症により、 拍動性の頭痛が出現する
→ これらの刺激が興奮となり、脳に伝えられる
→ 悪心・嘔吐など、随伴症状が引き起こされる

このような機序により、三叉神経が刺激を受けて血管拡張物質が放出され、血管の拡張と炎症により拍動性の頭痛が出現します。



頭部前傾の悪い姿勢

片頭痛の原因の一つとして、三叉神経が関係しています。三叉神経の脊髄路核は、C2まで下降して対側の視床に上向してシナプスしているといいます(増田,2001)。

上部頚椎(後頭骨-第1頚椎-第2頚椎)でつくられる侵害刺激は、三叉神経を刺激して片頭痛を引き起こす可能性があります。また、上部頚椎の歪み・固着が緊張型頭痛をとなり、頭頂部において大後頭神経を介して三叉神経第Ⅰ枝(眼神経)を刺激します。

頭部前傾の悪い姿勢が上部頚椎に歪み・固着をつくり、その結果として、三叉神経が刺激されて片頭痛が発現します。



肩こりとの関連

片頭痛と肩こりは、密接に関連しています。肩こりの筋肉として注目されるのが「僧帽筋」です。僧帽筋は後頚部から肩部、上背部にある大きな筋肉で、副神経・第3,4頚神経の支配を受けています。

ひどい肩こりとして僧帽筋の緊張が取れないでいると、その悪影響が副神経や頚神経を介して上部頚椎領域にも及び、片頭痛を発現させる下地をつくります。



三叉神経と上部頚椎

三叉神経に関連する上部頚椎に、直接的に治療刺激を施してはいけません。過敏な三叉神経を惹起し、血液循環が促され、頭痛を誘発・悪化させる懸念があります。

上部頚椎に操作・矯正を施さず、その領域の過緊張状態を緩和する手法が必要となります。

上部頚椎は重要だが、施術に際して刺激してはいけません。

カイロプラクティックには、片頭痛は交感神経系に関係する病態として、C6~T3への矯正を重視する理解があります。

片頭痛はほぼ専一的に科学の問題である。片頭痛の65%はC6-T3の甲状腺の機能障害であり、残りの35%がT12-L3のセグメントの問題である。片頭痛が十分に軽くなるまで、交感神経系にこだわること、決してC5以上、仙骨、腸骨をアジャストしてはならない(エドワール カール・ジョゼフ ダネフュー,1999,p.49)。

上記のような、カイロプラクティック独自の主張には、否定的な見解があるかもしれません。しかし、片頭痛のとき(三叉神経が過敏な状態のとき)は、決してC5より上部を刺激してはならないという意見は、医学的根拠に基づいて賛同できるでしょう。



僧帽筋の支配神経に注目

片頭痛と肩こりは、密接に関連しています。肩こりの筋肉として注目される僧帽筋は、副神経・第3,4頚神経の支配を受けています。

副神経は迷走神経のアクセサリーのような神経ということから付けられた名称である。副神経には延髄根と脊髄根とがある。脊髄根は、第5または第6頚髄までの脊髄の側索から出ている線維群である。脊髄根の線維は、副神経の外枝となる。外枝は、頚神経叢からの小枝(感覚性線維)と一緒になって内頚静脈の背側を下行し、胸鎖乳突筋にはいる。一部の線維は胸鎖乳突筋の中央部の背側面からこの筋を出て下行し、僧帽筋に入ってここに終止する。頚部では、副神経は頚神経叢、特に第3及び第4頚神経の線維と吻合する。頚神経の線維は僧帽筋の一部を支配している(船戸和弥,2012)。

ひどい肩こりとして僧帽筋の緊張が取れないでいると、その悪影響が副神経や頚神経を介して上部頚椎領域にも及び、片頭痛を発現させる下地をつくります。



脊柱交感神経系領域の圧迫

カイロプラクティック治効理論のなかに、片頭痛は交感神経系の圧迫に関係する病態という理解があります。

片頭痛の場合、交感神経系の圧迫が原因となることが多く、長期にわたる交感神経系の圧迫を矯正しないでおくと体内の化学物質の異常を起こし、治りにくくなります。そして以下の脊柱高位が、片頭痛と関連します。

・ 甲状腺機能と関係:C6~T3
・ 副腎機能と関係:T8~T12
・ 月経と関係:L1~L2

そなかで、とくにC6~T3は重視されます(塩川,1999,p.92-93)。



当治療院の理解として

甲状腺機能と関係する高位であるC6-T3への矯正刺激は、浅層に位置する僧帽筋(中部)にも良い影響を与えます。その効能として、重要な後頚筋である僧帽筋の緊張が緩和され、上部頚椎領域でつくられる三叉神経への侵害刺激も軽減されると思われます。

当治療院では「C6-T3」について、第一に僧帽筋へのマニピュレーション、補足として化学ホルモンの異常を示す脊柱高位と理解して操作・矯正刺激を施しています。



文献

エドワール カール・ジョゼフ ダネフュー著.増田裕訳(1999)THE NOTES ガンステット症状別患者管理ノート.科学新聞社.
船戸和弥(2012)副神経[XI].http://www.anatomy.med.keio.ac.jp/funatoka/anatomy/cranial/cn11.html,(参照日2016年8月3日).
増田裕(2001)くびの痛み.カイロプラクティック神経学(7).東三河医学会誌,107:p.6-8.
似田敦(2015)頭痛.現代針灸臨床論Ⅰ.12.22版.
塩川満章(1999)臨床カイロプラクティック.ルネッサンス・ジャパン.


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